誰でも知ってる怪談と言えば「四谷怪談」だろう。「播州皿屋敷」「牡丹灯籠」とともに日本三大怪談らしい。「耳なし芳一」は入っていない。
さて、四谷怪談である。貞女・お岩がぐうたら養子の伊右衛門に惨殺され、幽霊
となって怨みを晴らす、ぐらいしか知らない。昔、映画で見たことがある。古い映画ばかりやっていたが、場所が悪く、あっけなく潰れてしまった。

これは葛飾北斎が書いた「百物語」の中のお岩さんである。提灯お化けに限りなく近く見えるが、「提灯お岩さん」と書かれている。いつから提灯お化けになったのかは知らないが、かなり情けない顔をしているように見えるのは、私だけだろうか?
しかし、お岩さんは江戸時代の人には愛されていたのか、葛飾北斎がふざけて書いたのか、何か信念を持っていたのかは分からない。
私は実は「四谷怪談」というのは完全なフィクションと思っていたが、実はモデルがあるらしい。あるらしいのだが、あまりに「四谷怪談」とは違う話なのである。
1600年頃の話らしい。関が原の戦いの年だが、戦い終わって江戸幕府が置かれてからのことだろう。落ちぶれた武家の田宮家に伊右衛門が養子でやってきた。田宮家は大変貧乏であった。一方伊右衛門の方は、貧乏だったが幕府に仕える武士武士だったらしい。伊右衛門とお岩は仲が良かったが貧乏だったので、お岩は大富豪の屋敷に奉公に行くことになった。当時は奉公は住み込みが当たり前なので、お岩は早く伊右衛門さんと暮らせますようにと、毎日近くのお稲荷さんにお参りし、一生懸命仕事をしたそうな。これを知ったご主人はお岩が伊右衛門と暮らせるようにと幕府の役人に掛け合い、伊右衛門を昇進させお給料も良くなってお岩はめでたく伊右衛門の元に戻れることになった。お岩はお稲荷さんに感謝して、自宅の庭に「お稲荷さん」を建てて、毎日夫婦で拝み、幸せに暮らしたそうである。なお、田宮家は現在でも続いており、お岩さんは田宮家復興の祖としてあがめられているらしい。お岩稲荷は現在でも残っているらしいから、近所の方はこの話を知っているんじゃないかな。
なるほど、いい話だねって、全く違うじゃないか。伊右衛門は真面目で勤勉だし、お岩さんは信心深いいい妻だし、大富豪は奉公人の幸せを望んでいるし。怪談の要素はないな、メロドラマ仕立ての方がいいんじゃないの。
四谷怪談は舞台や落語で人気を呼び、おどろおどろして雰囲気の方が伝わってしまったのが真相らしい。
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